ヒハツの歴史

ヒハツとは

ヒハツ(和名:ナガコショウ、英名:ロングペッパー)は東南アジアに分布するコショウ科の植物で、果実の乾燥物はコショウに似た風味を持つ香辛料です。インドなど東南アジアで栽培され、スパイスとして使われています。

 

ヒハツの特徴となる辛味成分は、ピペリンと呼ばれます。このピペリンの辛味は、トウガラシの辛味成分カプサイシンの100分の1程度で、カプサイシンのように汗が噴き出る程ではありませんが、穏やかに、じんわりとからだを温める働きがあります。

また特徴的な香りを持ち、コショウや唐辛子などの香辛料と同じように食欲を増進させ、消化を促進する作用があるといわれています。

ヒハツの歴史

ヒハツは昔から利用されてきました。古くは紀元前のギリシア時代に医学の父・ヒポクラテスによって東南アジアからギリシャにもたらされ、スパイスとしてではなく、薬として利用されていました。その後、ギリシャ人やローマ人の間ではスパイスとして利用されるようになりました。

ヨーロッパでは、ヒハツが成熟したものが黒コショウになると考えられていたこともあり、大航海時代までは黒コショウとともにスパイスとして珍重されてきました。しかし、インドへの航路が見つかったこと、また新大陸で唐辛子が発見されたことにより、徐々にヒハツの人気は廃れていき、今日では一般市場で流通することも少なくなりました。

インドでは紀元前から栽培され、古くから冷えをとるスパイスとして利用されてきました。

インドやスリランカで古くから伝わるアーユルヴェーダにおいても最もよく使われる植物の一つとされています。またスパイスとしては、今日においても、ピクルスやカレーなどに使われています。

スリランカでは、アーユルヴェーダに基づいたスパイスティー・サマハンにも使われています。健康維持のために数世紀に渡り飲み続けられてきた伝統的なスパイスティーで、今では世界中で広く飲まれています。

 

中国では、漢代末ごろに胡食と呼ばれるエスニック料理が伝わった際に、それに使われる胡椒やコリアンダーなどとともに伝わったとされています。

ヒハツの利用が確認できる最も古い文献としては、元代の飲膳太医・忽思慧(こつしすい)が、皇帝・文宗に進奉した食養生書「飲膳正要」にヒハツを使用した料理の調理法が複数記載されており、古くから食用されていたことがわかります。

日本では、唐から送られてきたヒハツ(畢撥)の根と茎が奈良の正倉院に現存しており、奈良時代(8世紀ごろ)には日本に伝来してきたと考えられます。

沖縄には、ヒハツに近縁の植物「ヒハツモドキ」が自生しており、民家の石垣に這わせて栽培され、自家製のコショウとしても、肉料理の臭み取りや沖縄そばの薬味に利用されています。特に、琉球料理には欠かせないスパイスで、山羊料理や豚料理の調味料として使われています。

沖縄では実だけではなく、若葉を刻んで炊き込みご飯にしたり、新芽を天ぷらにしたりと、葉も食しています。